本日は、久しぶりに、脳の専門家のお話をしたいと思います。
今回は、最近注目の、新進気鋭の神経科学の研究者、藤野正寛さんの紹介です。藤野さんは、現在、京大大学院教育学研究科に在籍し、瞑想の脳科学研究で日本の最先端を走る、瞑想研究の第一人者。
※本人に無断で掲載してしまいましたが、有名になってもらいたいので期待を込めて敢えて掲載(笑)
MILi(一般社団法人マインドフルネス・リーダーシップ) でもしばしば登壇され、マインドフルネスや座禅を、脳科学からわかりやすく説明されており、「瞑想」という宗教的なイメージの誤解を、科学的に「ココロとカラダに良い」と証明してくれている、まさに「マインドフルネス」の伝道師の一人です。
最近、彼の瞑想研究が遂に国際科学誌のScientific Reportsに掲載されたそうです。
http://www.nature.com/articles/s41598-018-28274-4
こちらは京都大学での研究論文発表
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/180702_1.html
藤野さんの想いは
「全ての人が瞑想をしたほうがいい」とは考えていませんが、日本の中でこういった瞑想研究が進み、瞑想に対する誤解がなくなり、必要としている人のもとにすっと届くようになるといいな、と願っています。
とのこと。
私が「マインドフルネス」を知ったきっかけは、「瞑想が、こころの病いを解決するのに脳科学的にも効果がある」と知ったからで、有名なのが、以前も説明したマサチューセッツ医科大学のジョン・カバット・ジン博士という方による「マインドフルネス・ストレス低減法」。
アメリカでは、1979年から慢性的な痛みやストレスを抱える患者を対象に、1万9000人以上の患者が同プログラムを修了(-2011年までに)、効果が認められたと言われています。
そして、ここ10年ほどで瞑想を脳科学の表舞台で扱う研究が世界的に飛躍的に進み、「マインドフルネス(瞑想)が科学的に効果のあるものである」と証明されてきているのですが、ここ「禅」の国、日本では「瞑想は宗教っぽい」とまだ誤解されている悲しい現状です。
現在、うつ病や不安神経症などの精神疾患に対する治療法は、薬物療法と対話療法が主流ですが、もう一つの効果的な治療法として、「マインドフルネス(瞑想)」も必要ではないか?と私は考えています。
藤野氏のような方が、「瞑想」を科学的に解き明かしてくれて、日本でも「マインドフルネス」が「宗教ではない精神治療法」として脳科学から認められて、ストレスや不安に苦しむ方々が少しでも減るといいなと思います。
◇成人になっても脳は変化する(神経可塑性)
現在、藤野氏は、京都大学「こころの未来研究センター」の上田祥行特定助教とともに、センターのMRI(磁気共鳴画像装置)を用いて、瞑想の種類による効果の違いを実証することに取り組んでいらっしゃいます。
重要なキーワードとなるのは、『神経可塑性(かそせい)』という考え方。
神経科学の世界では有名な話なのですが、1990年代まで、「成人すると脳は変化する性質を失い成長しなくなる」というのが脳科学の世界では定説でした。
しかしながら、2000年代以降、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)という新たな手法を用いた脳機能計測の研究が進み、脳の研究が飛躍に進歩するにつれて、脳の仕組みが徐々に解明されてきた結果、実は「成人の脳も変化する性質を持ち続けている」ということが明らかになってきました。
人間は年齢と共に、身体機能は衰えてくるものの、脳だけは年をとってもずっと成長する(変化する)、これを『神経可塑性(かそせい)』というのです。
そして、2004年に、瞑想の脳科学研究の第一人者であるリチャード・デヴィッドソンが、成人の脳は「瞑想」によっても変化することを示したことにより、禅の「瞑想」や「マインドフルネス」が世界的に広まったわけです。
◇脳の過剰なアイドリング状態が心配(不安)をつくる
もう一つのキーワードは「デフォルト・モード・ネットワーク」という言葉。(DMN:Default Mode Network)
かの有名な脳科学者である茂木健一郎氏は、これを「ぼんやり脳」とわかりやすい言葉で説明されています。
人間の脳は、活動中でも一方で異なる領域間でネットワークを形成して協同的に活動したりする機能があるのですが、「デフォルト・モード・ネットワーク」は何もしていない時に働くネットワークで、
・ぼんやりと過去のことを思いだしたり、
・未来のことを想像したり
いわば「脳のアイドリング」のような状態です。
車の運転の前に、アイドリングしてエンジンを温めると車がスムーズに動くのと同じように、人間も脳のアイドリングのおかげで、過去の整理をし、未来の予測をすることができるようになるわけですが、
これが過剰になると「実際に起きていないことでも、余計なことを考えすぎてしまってうつな気持ちや不安に捉われたりする」ことがわかってきました。
例えば、「過去のことに対して、過剰に落ち込んだり、失敗を後悔」したり、「将来のことに対して、過剰に心配したり、失敗するのではないか?と不安に」なったり、というのがそれです。
藤野氏は、前述の通り、京都大学で「瞑想の種類」による効果の違いを実証することに取り組んでいらっしゃり、今回の研究論文では「体の微細な感覚に対し、反応したり判断したりせずに、観察していくような瞑想」(ヴィパッサナー瞑想や洞察瞑想)を行うと、感情や記憶に関わる領域と、デフォルトモードネットワーク(DMN)との関係性が低下していく傾向があることが分かってきました。
ちょっと専門的な話なので難解ですが、
簡単に言うと「うつ病や不安神経症は、過去の嫌な経験や将来の不安が過剰になりますが、「瞑想」によって、こうした過去や未来の捉われ(ストレス)を抑え、幸福感を実感できるのか?」と言うことを科学的に研究です。
今回、この研究発表は「瞑想がストレス低減と幸福感に繋がる」という、日本初の論文で大きな前進だと思っています。現在藤野氏は本は出版されていないそうなので、彼の思想や想いの詳細は細かくわかりませんが、今後さらに研究が進んでいき、本が出版されたらいいですね。
これを見ている皆さんも、藤野さんの活躍を見守っていきましょう。
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